【movie】ディア・ドクター


西川美和監督作品。『ゆれる』も見て良い!と思いましたが、今回はそれをさらに上回る映画。良作です!これは良い。
ある日突然先生がいなくなった・・・。
山あいの小さな村で一人医者をしている伊野。ある日相馬という青年が研修医としてやって来る。初めは過疎の村でしょうがなく研修をしていた相馬だったが、必死に村の人を助ける伊野を見て、次第に自分もここで働きたいと思うようになる。しかしそんな矢先、突然伊野は姿を消す。必死に捜索を続ける中で一つの嘘が明らかになっていく。
「人は誰しもがなにかになりすまして生きている」この言葉がとても重く心に突き刺さりました。なにかになっているということはそれを認める誰かが周りにいて、その人たちがいないと自分はこうだと思っていても認められないのです。今回は医師の免許を持っているか持っていないかという法律的には結構な犯罪になってしまうわけだけど、村の人たちは医師ということを、それがもし嘘だとしても、そう思いたかったのではないかと思うのです。あれ、変だなと思っていても変だと思いたくなかった。そして村には医師がいるという安心感が欲しかっただけじゃないのかと。
騙そうとして騙していたわけではない。ただ、思わず手を差し伸べてしまったら引っ込めなくなってしまった。きっとただそれだけだったんだろうと思う。
もしも伊野が村に戻ってきて、あれは何かの手違いだったんだよと言えば、もしかしてそれで丸く収まっちゃうんじゃないかとまで思う。それくらい、村には伊野という医師が必要なのである。
いや、この映画に大層な評論をしようとしてもできるわけがなく、ただ良い映画で心に残る映画の一つになるだろうなと思うのみ。
そうそう、西川監督は間の撮り方が上手ですね。映像やストーリーの切れ目に一つのワンシーンを入れる。それもゆっくりと時間を割いて。それがとても良いです。キャスティングも良いし。初主演の鶴べえ師匠も素晴らしいし。
いやあ、本当によかったです。久しぶりに邦画で良いものを見ました。これからの西川監督に期待です。
西川美和監督『ディア・ドクター』公式サイト