【book】小説 太宰治/檀一雄

小説 太宰治 (岩波現代文庫)

小説 太宰治 (岩波現代文庫)

10月に『ヴィヨンの妻』が映画化されますが、その著者である太宰治のことを友人である檀一雄が描いた作品です。個人的に太宰は嫌いです。どの作品を読んでも(といっても一部ですが)、生きていた頃の評判を聞いても、「子供みたいで甘くて、辛いことに立ち向かえなかった人」というイメージが抜け切れません。いつだったかテレビで「太宰の作品は読んでいて元気が出る」と言っていましたが、私にとってそんなことはなく、むしろ萎えていってしまうもの。だから読むときは元気のあるときしか読めません。今回は太宰治の友人である檀一雄が、友人から見た太宰治を描き若き青春を回顧する、という感じです。
読み終わって太宰の印象は変わったか?・・・いいえ、まったくです。やはり太宰は「大人になりきれなかった子供」にしか思えません。ただ、とても苦しかったんだろうとは思います。生きていく人生が、これから生き抜かねばならぬ未来が。檀曰く、「太宰の文学は死をもって完成する」のだそうです。太宰が人生の最期に自らの死を選ぶことで、過去に書いてきた作品は完結する。私は文学に関する教養はないですから、完結するのかどうかはわかりません。ただ、もし完結すると太宰が考えていたのであれば、その妄想にとりつかれていたのだろうと思います。自分は死すべき人間なのだと。死なねばならぬと。まあ正直、一人で死ねばいいものを、自分以外の女を道連れにしたことについては腹立たしい限りですけどね。意気地なし!と叫びたい。
がしかし、こんなにも太宰が嫌いなのは、自分にも同じような気持ちや弱弱しさがあるからだと思うんですよね。太宰が死にたくなったり、大人げない甘いことを言ったり、それで周りに怒られたり。なんか自分も知らずにそんなことをしてるような気がして、とても怖い。まるで自分の心や行動を見透かされているような。だから読むのが嫌で、太宰には腹が立つ部分があるのだと思います。
ヴィヨンの妻』読んでみたいと思います。・・・元気があるときに・・・w。
映画『ヴィヨンの妻』公式HP
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